ヘルス・コミュニケーション日記
もとヒヨっ子研究者の会社員2年生が、ヘルスケア領域の話題や子育て日記、趣味等思いつきで綴ります。
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ヘルスコミュニケーションの定義:その2
本日は原稿仕事の準備作業をそのままエントリに。

以前紹介したValeteらの定義の紹介に加えて、
世界保健機構(WHO)のヘルスプロモーション用語集
Health PromotionGlossary【1998】
からヘルスコミュニケーションの定義の私訳を試みる。
whoHealthPromotionGrossary.jpg

この用語集は、すでにこちらのサイト
松阪保健所長の佐甲先生によって紹介されている
(すごい情報量です。ヘルスプロモーションに興味ある方には
是非おすすめ)、勉強のために自分なりに原典に戻ってみることにする。

上記佐甲先生のウェブにはヘルスプロモーションに関する
解説
も詳しいです(先日言及したadvocacyについても
解説があります)。ヘルスプロモーション用語集の訳を
冊子にして無料配布(送料自己負担)されているようなので
ご興味ある方は是非どうぞ。
------------------------------------------------------
以下、私の試訳です。適宜補足してあります。
末尾に原文を添付しました。興味ある方は末尾からどうぞ。
(以下の試訳は試訳にすぎませんので、訳が適切でない
可能性があります。引用は自己責任でご自由にどうぞ)

ヘルスコミュニケーション:
ヘルスコミュニケーションとは、一般市民に向けて健康上の
様々な問題について情報提供し、重要な健康問題を社会的な
検討課題として話題に載せ続けるための主要な戦略である。
一般市民に有用な健康情報を普及させるために、
マスメディアを含めたあらゆるマルチメディアや革新的な
通信技術(IT)などを活用することは、発達過程における健康の
重要性はもとより、個人及び社会全体の様々な健康問題の
諸側面に関する認識を高めるのである。




参考としてA Framework and Guide to Action(1996年)という
同じくWHOやAMRO/PAHOといった組織が出したガイドラインから
引用された以下のような説明も付記されています。
AMRO:Regional Office for the Americas
PAHO:Pan American Health Organization


ヘルスコミュニケーションとは、個人や社会全体の健康状態を
より良いものにするために行われる営みである。
多くの現代における文化事象は、健康にとっては好悪両面の
影響を持つマスメディアやマルチメディアによって
一般大衆に伝えられている。これまでの先行研究では、
(行動科学などの)諸理論をもとに設計されたメディア・
メッセージを用いたヘルスプロモーション活動は、社会的な
検討課題として健康問題を人々の話題に載せ、健康に関して
専門家が発したメッセージの効果を強め、一般市民がさらに
情報を集めることを促進し、また、いくつかの事例では健康な
ライフスタイルを維持する効果すらあることも示されている。

ヘルスコミュニケーションは、エデュテイメントedutainmentまたは
エンターエデュケーションenter-educationと呼ばれる領域や
(訳者注:現在の米国のヘルスコミュニケーション研究分野では
エンターテイメント・エデュケーション
Entertainment Educationという表現が一般的です)、
医療や健康に関するジャーナリズム、人と人とのコミュニ
ケーション、社会におけるコミュニケーション、ソーシャル・
マーケティング
などのいくつかの領域を含んでいる。つまり
ヘルスコミュニケーションの営みとは、マスメディアやマルチ
メディアから物語の伝承や人形劇や歌など伝統的で文化固有の
コミュニケーションまで、様々な形態を持つ。また、
控えめであまり目立たない健康メッセージである場合もあるし、
昼のメロドラマ(soap opera)のエピソードのように、
既存のメディアの中に盛り込まれた形のものもある。

コミュニケーション・メディアの発展、特にマルチメディアや
新しい情報通信技術の発展は、健康に関連する情報環境を
改善し続けている。この意味では、ヘルスコミュニケーション
は個人や社会の健康づくりをより良く支援する(empowerする)
上で、より重要な役割を担ってきている。

--------------------------------------------以上。

訳者注:
訳出していつも思うのは、strategyという単語。
戦略・戦術、という日本語よりもより気楽に使われている
気がする。方策、というと日本語として具体的イメージが
湧きにくい。方法論・具体的解決方法を伴った方針・ビジョン
などの日本語のほうがまだ良いか。今回はそのまま「戦略」
を採用。


訳者補足コメント:
ポイントは4つある(管理人注:1月12日4つ目を追記しました)
1.諸理論に基づいた先行研究が豊富にある、ということ
2.purposiveとnon-purposiveの違いについて
3.メディアの「活用」≒「協同、という視点
4.追記(大事なことを忘れていました):purposiveな
Media Advocacyには扱うトピックに向き不向きがある

1.先行研究
この領域の研究蓄積の日米差は明白である。議論の余地なし。
Journal of Health Communication既刊の教科書などを読めば、いや
読まなくてもぱらぱらめくるとそれはわかる。

2.purposiveとnon-purposive
訳してみて改めて思うのは、やはり前回紹介した
Valeteらの定義の方が実践家の定義、という感じがする、
ということ。つまり専門家の意図的・目標的purposiveな
ものと、非専門家であるメディアや送り手の行動原理に
基づいたnon-purposiveなものの違いに敏感、ということだ。

このWHO定義では一緒くたにされて詳細が述べられていない
昼のメロドラマ(soap opera)に盛り込まれたメッセージが
健康や医療の専門家が主体的に活動した結果生じた
purpsiveなものなのか、単にテレビ屋さんの行動原理で
構成されたものなのか、の違いが明記されていない。

ヘルスコミュニケーション研究者の立場からは、この点
こそ(研究者や健康・医療専門家に何ができるか)が
重要であり、おのずと定義の質が変わってくることは
自然なことであろう。

3.メディアとの協同
テレビ業界の作り手達と協同し、人気の高いテレビドラマを
通じた健康増進や疾患啓発に取り組んでいるHH&S
インターンとしてはその辺が気になるところである。

とはいえ、これだけメジャーな定義に組み込まれている
にも関わらず、ドラマを使った主体的なpurposiveな
ヘルスコミュニケーションは日本ではあまり注目されていない
ようだ(というか知らないだけ、発想すら湧かないだけ、
実行不能と思われてあきらめているだけ、のいずれかだろう)。

医療専門家や研究者の立場からは、その効果に注目するよりも
「テレビはいいかげんな描写ばかりで誤解を招く。けしからん!」
という批判の方が強くなるようだ。建設的な批判は重要だが、
批判だけでは解決しないことが多い(そもそもテレビ屋さん
たちは企業体としては、識者や研究者の批判などあまり
気にしていないし、社会批判(バッシング)をされない
程度に視聴率を取るための方法を尽くす、という行動原理は
不変なのだから専門家のいう厳密な意味での正確さよりも
テレビとしての成立度を優先するのがその行動原理から
言うと自然である:
(勿論個々には作り手(ディレクター・プロデューサー)
個人のプロ意識・モラルによって様々で場合によりけりだが)。

テレビドラマの持つ影響力の大きさ、可能性を認め、
「活用する」「トライする」という姿勢が組織的な
活動レベルに至っていないのだ(個人ではたくさんいる)。
そんなこと医療専門家や研究者のする仕事ではないと
思われているふしもある(神医の論理か)。
方法論(テレビ屋さんと医療専門家・研究者を組織だって
つなぐ機関など)も人材もいない、ということだろう。

米国の例を見ても、本来なら政策の立場から出てくるアイデア
なのかもしれない(「戦略」だし)。
単に日本ではそれが出てきてない、というだけか。

メディアは敵に回してはいけない。ろくなことがない。
メディアで普及した誤解も、メディアで是正するしかない。
その威力を活用させてもらうためにWin-Winをどう
構築するか、どううまく「利用される」か、という
戦略を練らなければならない。テレビ屋さんにとって
メリットがあり、正当なものでなければ長続きしない。

HH&S設立の経緯や苦労話は、所長のVicki Beckから
お茶飲み話のように聞くことがあるが、
本当なら国家戦略に準ずるノウハウだ。
彼女らこそ上記Win-Win関係を構築するために
日々コーディネートや専門家とテレビ屋さん相互の意思疎通
のために苦労している。
お金を使って研究する価値があることと認識している。
というわけで研究費を諸々申請中。

どこかこういった領域に理解と関心を示してくださる
殊勝な財団・研究費助成機関はないかなあ。。。

⇒以下、1月12日追記
4.purposiveなMedia Advocacyには扱うトピックに向き不向きがある

3までで書いたことはあくまでエビデンスがはっきりしていて、
専門家間でほぼ合意がとれた事象について効力をより発揮
するが、そうでないトピック、つまり専門家間でも論争が
起きて決着がついていないようなトピックは扱うのが難しい。

その点を間違うと、やり方によっては1部の団体や個人の
営利目的(ビジネスとして成立することが悪いことだと
言っている訳ではない)や思想・主義・思惑などを
実現するための罪深いプロパガンダとなる危険性を持っている。

他の医学知識・医療技術などと同様、両刃の剣、なのである。
それは3で述べたメディアとの協同によって加速する。

現在の日本で言うと脳死問題・医療費自己負担問題・
尊厳死問題・新薬開発や承認(治験・臨床試験と国の体制)
に関することなどである。さらに医療保険制度のような
その文化・国固有の構造的な問題も
ヘルスコミュニケーション研究・活動だけでは解決しにくい。

どうしても経済・経営・政策・政治といった世界のツールや
アクションが必要になるだろう。

この点を間違うと論争の袋小路にはまり込むことになる。
テレビ屋さん新聞記者さんと医療関係者や研究者の論争
の大抵はこのパターンだ。HH&Sのような組織のあり方や
専門家や国家がメディアの力を積極的に活用しようとする
Media Advocacyの考え方は、メディア側からすると不遜で
自律権を侵害されるように感じるのだろう。

が、専門知識を咀嚼できない(する気もない)メディアの
作り手、番組、記事が氾濫しているのも事実である。
また、非常に手間が掛かるわりに益の少ない(視聴率や部数がとれない?)
作業であるのかもしれない。

そこに専門家が歩み寄り、メディアの側のメリットを
生み出し、まっとうなメッセージを効果的な
方法で(ニーズの自覚のない)一般市民に届ける
(アウトリーチする)戦略を専門家や政策立案者が
考えているか否か。

米国ではその一つ(多くの中の単なる一つに過ぎない)が
テレビドラマを用いたエンターテイメント・エデュケーション
であり、HH&Sである、ということなのだろう。勿論
この程度のドラマを使ったアウトリーチで解決できることは
少ないし、そうでない情報が氾濫してそちらの影響力の
大きさや問題を解決できないかもしれないが、とにかく
10年(今年から5年をさらに更新)で米国は国家予算を
投じてこのプロジェクトを進めている。トライしているのだ。

日本はどうか?トライはされているのか。またこういうことを
考えている研究者・政策立案者がどれくらいいるのだろうか。
米国の例を学びながら日本のことを常に考えていきたいと
思っている。

以上。

訳出誤りのご指摘・ご批判・ご意見・コメントお待ちしております。

2008年2月追記:ヘルスコミュニケーションの定義(訳語編)というのも書きました。
---------------------------------------------------
以下原典。Health Promotion GlossaryはPDFで公開されて
います(ここから手に入ります)。


Health communication:
Health communication is a key strategy to inform the
public about health concerns and to maintain important
health issues on the public agenda.
The use of the mass and multimedia and other technological
innovations to disseminate useful health information to
the public, increases awareness of specific aspects of
individual and collective health as well as importance
of health in development.

Reference: adapted from Communication, Education and
Participation: A Framework and Guide to Action.
WHO (AMRO/PAHO), Washington, 1996

Health communication is directed towards improving the
health status of individuals and populations. Much of
modern culture is transmitted by the mass and multi media
which has both positive and negative implications for
health. Research shows that theory-driven mediated
health promotion programming can put health on the public
agenda, reinforce health messages, stimulate people to
seek further information, and in some instances, bring
about sustained healthy lifestyles.
Health communication encompasses several areas including
edutainment or enter-education, health journalism,
interpersonal communication, media advocacy,
organizational communication, risk communication,
social communication and social marketing.
It can take many forms from mass and multi media
communications to traditional and culture-specific
communication such as story telling, puppet shows and
songs. It may take the form of discreet health messages
or be incorporated into existing media for communication
such as soap operas.
Advances in communication media, especially in the multi
media and new information technology continue to improve
access to health information. In this respect, health
communication becomes an increasingly important element to achieving greater empowerment of individuals and
communities.
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東京都世田谷区在住のじょに~です。長年慣れ親しんだ杉並区を離れ、先月隣の区に引っ越しました(ついでにハンドルネームも会社で頂いたコードネーム?に改名^^;)。興味があるのはヘルスケア領域のビジネス、ヘルスコミュニケーション(特にメディア経由)、シリアスゲームの医療健康分野における活用、医療ドラマ、医療者患者関係、医師支援、ワークライフバランス、翻訳、子育て、映画など。数年前南カリフォルニア大学(USC)でヘルスコミュニケーションについて学びました。帰国後は企業で医療分野のビジネスに取り組んでいます。通信制MBAでMBA取得。もともと看護師ですが博士号(医学)は社会医学領域で取得。シリアスゲームによるヘルスコミュニケーションにも興味を持っています。
引越し先にも慣れ、世田谷の畑の多さに驚きつつ、近所や公園を二人の息子達と散歩しつつ考えたことや日々学んだことなど書き続けていきたいと思います。

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