「子育て日記」カテゴリに入れようかと思ったが、
書いているうちに研究がらみになってきたので 「研究」カテゴリへ。 一般的な小児科医で指定される予防接種は 以下のように日本より多い気がする。 で、カリフォルニアでは保育園や学校に入るために 義務化しているらしい。 1回の注射で4つとか5つとか混合してるらしいし、 日本よりワクチンの精度が悪く副作用が出やすいものも あるという噂も聞く。かといって医療費の高いここ米国で ややこしい病気になるリスクは極力下げたい。 親の心配や情報ニーズは結構高いように思う。 子の親として他人事ではないこのトピックに 友人小児科医からの意見と合わせて少し考えたい。 2ヶ月 DTaP-Hepatitis B-IPV and HIB (ジフテリア・破傷風・百日咳、B型肝炎、ポリオ、 インフルエンザ桿菌)1回目 3ヶ月 Prevnar(肺炎球菌の不活化ワクチン)1回目 4ヶ月 DTaP-Hepatitis B-IPV and HIB 2回目 6ヶ月 DTaP-Hepatitis B-IPV and HIB 3回目 9ヶ月 Prevnar 2回目 12ヶ月 Measles-Mumps-Rubella (麻疹(はしか)・おたふく風邪・三日はしか) 1回目 and Prevnar 3回目 15ヶ月 HIB 4回目 and Varivax(水疱瘡) 18ヶ月 DTaP 4回目 and Prevnar 4回目 2年 (Varivax) 3年 TB test (結核) 4年 Measles-Mumps-Rubella #2 and Polio #4 5年 DTaP #5 and TB test 10-15年 Tetanus booster(破傷風追加免疫)
上記のようなリストに「日本とどう違うの?」と
友人の小児科医(日本の某こども病院勤務)に 質問したところ、以下の返事をもらった。 わかりやすかったので、参考までにご本人の了承を得て以下に 掲載させていただく (掲載内容について当方は責任を持てませんので、 あくまでご参考まで)。 ------------------------------------------------------ 予防接種の違いについてですが, アメリカと日本による予防接種スケジュールの違いは 小児科医のあいだでもしばしば話題に上ります. 内容についての主なポイントはB型肝炎とHibだと思います. B型肝炎について. 日本では,母親がB型肝炎のキャリアだった場合のみ, 小児については接種しています(保険でカバーされています). 国内では,母子感染以外はほとんど報告されていないはずなので, それで十分なのだと思いますが,米国での義務の理由には, B型肝炎の感染者の数の違いが関係しているのでしょうか?(詳細は知りません) Hib(インフルエンザ桿菌)について. インフルエンザ桿菌は,小児で細菌性髄膜炎や急性喉頭蓋炎の原因になります. どちらも非常に重篤な病気であり,小児科の臨床をやっている医師の多くは 「日本でもはやくHibワクチン義務化にならないかな・・」と思っています. 実際に,僕が経験した細菌性髄膜炎は10人中9人がHibでしたが, 知り合いのアメリカで臨床をやっていたアメリカ人医師(臨床経験40年)は, 「Hibの髄膜炎なんてみたこともない」と言っていました. しかし,日本の予防接種における大きな問題は,予防接種に対する認識の薄さだと思います. 感染したら大変な上に,予防接種の有効率は高く,かつ無料な 麻疹の予防摂取率がいまだ80%前後です. 接種させていない保護者の意見を聞くと,多くは 「忙しかったから」「なんとなく」「接種させようと思ったらかならず風邪ひいて」 「予防接種よりも自然にかかった方がいいと思ったから」 などの理由です. 今現在でも年間数十人の小児が麻疹で命を落としているにもかかわらず. おそらくは啓蒙活動の不足によるところが大きいと思います. 広い意味でのneglectに相当すると思います. また,「予防」ということに対する関心度が日米間で大きく違うのだろうとおもいます. 予防により結果的に得をする,という理解が進んでいないのかもしれません. 個人的にはアメリカのように,予防接種がすんでいないと小学校に入れない, というのがいいと思います. もちろん,医学的な理由などで接種ができない場合を除いて. 長文失礼しました. ----------------------------------------------以上引用 なるほど、ありがとうK先生。小児科医として日々接する 現実への問題意識がよくわかりました。 (実際、米国では予防接種普及のためのキャンペーンがかなり 展開されてます。カリフォルニアのように義務化するという 州もあるようです。) で、一方で母親に根強く「予防接種副作用不安」というのが あるのも事実。下記のような本もたくさん出ているし、 自分の専門である医療ドラマでもエピソードとして 取り上げられている。 ERでは、すでに複数回「親が予防接種を受けさせない方針で、 その子供がはしかやその他の予防接種を受けていれば防げた であろう疾患で亡くなる」というエピソードを展開している。 これは既存の医療制度や保険制度への疑問と裏腹に 自然志向や代替医療の進んだ弊害を示す 米国の悲しい現実のようだ。 (ドラマの設定では、大抵上記のような親は 知識が豊富でお金持ちだったりする) 現代科学の発展の上に成立している部分の大きい医学を 妄信はしてはいけない(科学に絶対は無く、他の方法より ましだから、という理由で選択されている場合が多いから) と思うが、かといって現代医学の恩恵の部分を拒否するに 足る根拠を我々はどれほど持っているのだろうか。 また、疫学的な根拠(何%の確率でどうこう、という議論) と、わが子が病気になるかもしれない、という目の前の100%か 0%とかという現実をどうやって天秤にかけたらいいのか。 現時点では、自分ははっきり上記どちらの立場も取れないで いる人間だが、消費者の立場から「はっきりして欲しい」 とは思っている。 勿論子供には予防接種を受けさせるが、それはそのリスクが 予防接種を受けさせないことで被るリスク より少ないと信じるからであって、信頼できる医師と 自身の情報収集によるところが大きい。あと、現在法的に しばりのあるカリフォルニアに住んでいるから、という 現実的な面もある(何年この地に住むかわからないとしても)。 そういった決定に足る要素や情報源が無い場合に、親はどう 判断しうるのか。 非常に重要な論点を含んでいると思うが、自分の知識では 今のところこれ以上踏み込めない。 中途半端で恐縮だが、後日考え直す機会を持ちたいと思う。 結局予防接種に悩む親に対しては、「自分なりに情報収集 して納得のいく選択をするしかない」、と自分は言うだろう。 勿論、上記のような医師の誠実な意見やその他反対派の 専門家の情報・意見をきちんと吟味しての上でのことだが。 ここから先はリテラシー(情報を読み解き利用する能力) の議論になるのだろう。専門家やその周辺のプロに期待される ことはまだまだ多いように思う。 これは勿論、自分のようなヘルスコミュニケーション研究者や メディアキャンペーンデザイナーも同様である。 USCの講義で習ったように、まず大切なのはどれほど確かな 根拠(evidence)を持てているのか、という部分だからだ。 追記:関連するエントリを5回連載で組みました。 こちらから ご興味ある方はどうぞ。 ![]() |
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