よく言われる紹介は「楢山節考」その後、というもの。
重いテーマなのだが、読後感は不思議と明るい。
解説の辺見さんも書いているが、「楢山節考」とは全く
別の地平を目指した作品だし、作者の男性と女性という
性差も大きく影響しているように感じる世界観だった。
簡単に物語を説明する。
「姥捨て」「棄老譚」と呼ばれるジャンルの話である。
舞台となる村では、
60歳で還暦を迎えた男女は村の決まりで蕨野(わらびの)
という土地に行き、そこで息絶えるまで日雇いの仕事で
食いつなぐ「わらび衆」としてすごす。
その「わらび衆」となった老男老女(といっても60歳だが)
9人の集団生活をほぼ終焉まで見届ける物語。
物語はわらび衆のリーダーとなった、もと庄屋の婆のレンと
その嫁ヌイのテレパシー交換(往復書簡)的な「対話」で
進む。
独白のような独特の対話のテンポと、江戸時代のいつごろ
だろうか、当時の世俗や困窮ぶりを反映させた物語展開。
切れ味の鋭さや背筋に刃物を突きつけられたような
緊張感は「楢山節考」に劣るように感じるが、
その分リアルで日常生活レベルの「死」「生」「性」「老い」
「世代交代」について自然と考えさせる物語である。
自然発生的に介護や相互扶助の仕組みが成立し、
生きるために「わらび衆」の決まりを破り、たくましく
生きのびる老人達。
人は生き、死に、そして生まれ変わる。
当たり前かもしれないが日ごろ感じることの少ない仕組みに
ついて、違和感なく感じさせてくれる物語でした。