ヘルス・コミュニケーション日記
もとヒヨっ子研究者の会社員2年生が、ヘルスケア領域の話題や子育て日記、趣味等思いつきで綴ります。
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予防接種とヘルスコミュニケーション(その2)
さて、昨日に続き小児予防接種について
もう少し詳細に見ていきます。

本日のお題は医師側の主張
「予防接種を受けさせるべきなのはなぜか?」
についてのお勉強です。
小児ICU(NICU)で働く友人小児科医(医師歴約7年)K先生
(以前コメントを紹介したK先生とは別人です)の意見を
ご本人の許可をもらって紹介します。

以下は管理人の
「米国の予防接種は現在1本の注射に5種混合
(ジフテリア・破傷風・百日咳、B型肝炎、ポリオ)
や3種混合(麻疹(はしか)・おたふく風邪・三日はしか)
など複数のワクチンが入っているものがあるんだけど、
これって母親の不安をあおる様子。大丈夫なんだよね?」
という質問に対する答えからです。

ちょっと長いですし、あくまでこの先生個人の意見であって
全てが小児科医全体を代表する常識・意見というわけでは
ありませんが、ほとんどの部分は大多数の小児科医の気持ちを
代弁していると思います。

日々高度医療の現場で重症の子供の命を救い続けている
医師の訴えをお読みください。今後の議論の基礎をなす
重要な部分です。
答え:
まず、ワクチンの混合打ちについては、抗体獲得率
(管理人注:ここでは予防接種の効果とご理解ください)に
問題がないことはすでに証明されており、日本以外では
普通のことです。日本で混合打ちがされなくなった理由は、
1970年代のMMR(麻疹・おたふく風邪(ムンプス)・風疹)が
使用された際に無菌性髄膜炎が多発したためです。
後に原因はおたふくかぜ(ムンプス)ワクチン株の種類に
よることが判明したのですが、なんとなく「混合打ち憎し」
の印象を植え付ける結果になってしまいました。
おかげで全体としての接種回数が増え、「予防接種って、
回数が多くてめんどう」という風潮の一因になっています。

また、麻疹や風疹はたったの1回接種という中途半端な
システムになっています。1回では効果が不十分なのです。
ようやく新年度より、麻疹・風疹が混合となり、
MRワクチンとして2回接種となります。

日本の小児科医としては、肺炎球菌やインフルエンザ菌b型
(以下、Hib)のワクチンが行われている米国の状況は、
本当にうらやましいものです。今の日本では、肺炎球菌や
Hibの髄膜炎、麻疹の脳炎・肺炎などで、毎年数百人もの
子供が死んでいるのです。そして、その何倍もの子供が
寝たきりや麻痺といった重度障害を残しているのです。
こんな少子化の時代に、こんな国民医療費高騰の時代に・・・、

馬鹿げた医療制度だと思いませんか?
米国の医師はHib髄膜炎や麻疹の患者など全く見なくなったと
言っています。

では、なぜ、こんな予防接種制度がまかり通っているのか・・・?
それは、予防接種に対する国民の根強い不信感に基づくと
考えられます。すなわち、「予防接種には重大な副作用
(正しくは、副反応と言う)がある」との迷信です。
おそらく、ここで言う「重大な副反応」とは、
アナフィラキシー、ADEM(急性散在性脳脊髄炎)などと
思われます。

(1) アナフィラキシー
予防接種に伴うアナフィラキシーは10万回に1回以下と
されています。輸血の場合が1000回に1回であることを
考えるとずいぶん少なくなっています。
抗生剤などの薬剤アナフィラキシーとあまり差はないのでは
ないでしょうか?しかし、不幸にもアナフィラキシー
ショックで死亡したり、重度障害を残している症例が
いることも事実です。基本的には「アナフィラキシー
ショックの対応ができない医師や施設が予防接種に当たる」
ことに問題があると思われます。小児科医の多くは、
ホンモノの急変に弱い人が多いですし、診療所や保健所では
ショック治療は不可能です。一方で、すべての予防接種を
総合病院で行えるほど小児科医の数がいないことも事実です。

(2) ADEM
感染や予防接種を契機として、1から2週間後に脳脊髄の
脱髄を起こしてくる疾患です。けいれん、意識障害、麻痺
などが一過性に起こりますが、多くは全快します。
しかし、中にまれながら重度障害を残してしまう例も
あります。昨年、日本脳炎ワクチンの接種後に山梨の
中学生がこのADEMに罹患し、不幸にも寝たきりになって
しまうという「事件」があり、日本脳炎ワクチンそのものが
全国的に緊急停止になってしまいました。
確かに山梨の中学生の例は気の毒だとは思いますが、
このADEMの確率はアナフィラキシーよりさらに少ないもので
す。また、山梨の症例についても、ADEMの原因がはたして
本当にワクチンのせいなのかすら不明です。
(同じ頃に、かぜを引いていたとの話もあります。)
この一件のために、ワクチンを停止しなくては
ならないのか、腑に落ちません。

その他、多い副反応としては、ワクチン接種による発熱や
穿刺部腫脹などがありますが、発熱したってせいぜい
1~2日ですし、腫れも無治療で消退します。
けいれんとの関係は否定されました。

予防接種学とは公衆衛生学にその基礎を置く学問です。
その本来的な目的は、「個々人を疾患より守る」ことでは
なく、「社会における疾患の蔓延を防ぐ」ことにあります。
だからこそ、かつてインフルエンザワクチンは、
社会においてウィルス流行の媒体となる学童を対象に
強制的に行われ、幼児・成人・老人には接種されません
でした。(インフルエンザウィルスが学校で「うつしあい」、
子供たちが各家庭に「持ち帰る」ことで社会全体に流行する
という図式で広まるのです)

ですから、何百万人もの子供たちにワクチンを接種し、
その中で不幸にも副反応に見舞われる症例がいたとしても、
社会における流行を阻止することができ、なおかつ社会全体の
医療コストが、

「予防接種で抗体獲得しなかった例の医療費+副反応症例のケアの総コスト」
  
  < 「予防接種を導入せず、疾病が流行した場合の総コスト」

となれば、その予防接種は「成功」なのです。
しかし、親にとってはそれぞれ自分の大切な子供ですから、
こんな「社会防衛」の発想なんて説明されても納得できる
はずもありません。だからこそ、予防接種には「強制力」が
必要なのです。

もちろん、この考え方に沿えば、予防接種の副反応で不幸にも
後遺症を残したり、死亡したりした患者へのケア、国家補償は
手厚くする必要があるとは思います。

Hibが導入されていない日本では、麻疹は最も重要なワクチン
だと考えています。麻疹ワクチンは、接種後に発熱をすること
がかなりあります。副反応を気にする母親には、ぼくは以下の
ように説明します。
「確かに接種後に発熱することが多いけど、1~2日間です。
麻疹は接種しなければ100%罹患します。罹患したら、39~40℃
の発熱が約1週間続き、どんな薬も効きません。罹患した1000人
に1人は脳炎となり、そうでなくても肺炎や脱水のために入院や
外来点滴は免れません。毎年日本全体で80人の子供が死亡し
数百人が後遺症に苦しんでいます。それでも、副反応の方を
問題視するなら、受けなくてもいいですよ・・・」

これで、接種しなかった人は今までいません。

---------------------------------------------------
管理人質問:
予防接種を受けなくても大体治る病気も中にはあるよね?
予防接種反対派の意見としては、利益よりも害が大きい、
という主張が多いように思うんだけども。

答え:
この論理は、多かれ少なかれ予防接種否定派に共通した
ものです。確かに、彼らの指摘どおり、麻疹も風疹も、
基本的には罹患しても多くは自然治癒するものです。
問題になるのは、その経過の中で、脱水なり、肺炎なり、
はたまた脳炎なりの合併症を起こしてトラブるケースなのです。
例を挙げて説明しましょう。

1000人の子供が麻疹に罹患した場合を例に取ると、
約8日間の経過中に、約半分は脱水のために一度以上、
外来点滴を受け、約100人は肺炎の合併のために入院加療を
受け、1~2人は脳炎で死亡、ないしは重度後遺症
(寝たきりなど)になるのです。

おそらく予防接種反対派の代替医療を行う人たちのところ
には、入院加療を受けずに自然軽快した約900人が、
「自然に問題なく治った、やっぱりあなたの言うとおり
です!」と報告に来るでしょう。この人たちのもとには
重症化した患者たちは戻ってきませんから、ましてや
死亡した症例を目の当たりにすることはないですから、
ますます誤った自信を深めてしまう。

一方で、私たち小児科医(特に高度医療機関の小児科医)の
もとには、重症化した残り100人が集まって来ます。
死亡したり寝たきりになった麻疹症例など、
「予防接種さえしていれば・・・」と、
悔やんでも悔やみきれません。

先進国で10人に1人もが重症化する感染症など他にありません。
予防接種を否定する奴ら憎し・・・となるのです。
そしてまた、重症化した患者の親たちは、ここで初めて
予防接種を子供に受けさせなかった自分に対する罪悪感に
苛まれるのです。

両者の主張は確かにどちらも筋が通っているように
聞こえるでしょうが、決定的な違いがあります。
予防接種派はあくまで「予防」であり、否定派はどんな
論理を立てようとあくまでも「罹患」(管理人注:病気に
かかること)を前提にしているのです。ただ、予防接種に
対するもう一つの不安感の根源がここにあり、健康体に
対する医療行為で副反応を食らうことへの不信感とも
言えます。生体間移植医療のドナー手術に対する不安感に
似ているでしょうか。

もう一点、予防接種否定派に共通した論理があります。
ジフテリアやポリオなど今の日本ではほとんど発生しなく
なった疾患に対して、医療行為である予防接種を政策的に
続けることへの非難です。

この点は確かに一理あるところですが、予防接種を
継続しているために発生が抑えられているのか、そもそも
撲滅されたのかが区別できません。しかし、国際間の人の
移動が活発な時代ですから、これらの消えかかった疾患が
いつ感染爆発を起こしてもおかしくない状態ではあります。

--------------------------------------------------
管理人質問:
個々について質問。
おたふくや水痘は自分達が子供の頃は皆かかってたよね。

答え:
ここが素人には最も理解できない部分です。なぜなら、
自分の経過=みんな同じ経過だろう・・・

しかし、ムンプスで髄膜炎を併発する症例なんて
ざらにいるし、重症水痘で死んだ症例を我々は見ているわけです。
そんなことをどんなに真摯に説明したところで、素人が
実感を持って理解するのは不可能なんです。
何度も言いますが、だからこそ、予防接種は強制でなければ
意味がないと思うのです!

また、化学療法中とかステロイド使用中の患児にとって、
水痘は命取りになる病気です。「全員に水痘を」というのは、
健常児での水痘流行を食い止めて、これらの「弱い子供たち」
を守る意味もあるのです。
早い話が、「予防できる病気で、死んだり寝たきりになる
なんて、こんなもったいない話はない」というのが、
我々の一致した見解です。

---------------------------------------------
管理人質問:
肺炎球菌もイマイチ子供にとっての脅威レベルが
よくわからんのですが。。。


答え:
日本では小児の細菌性髄膜炎の原因の第一位はHib、
第二位は肺炎球菌です。それ以外でも、Hibの喉頭蓋炎・
心外膜炎、肺炎球菌の敗血症なども、れっきとした
「死ぬ病気」です。
小児死亡が世界有数の低さである日本で、「子供が死ぬ」
ことがいかに異常事態であることか、考えたことがありますか? 
予防できるはずの病気で死んでいる子供がいることが、
いかに恥ずべきことか・・・
ただの一人ですら、こんな病気で死なせてはいけないのです!

この国の国民、いや正しくは世論を誘導しているマスコミの
皆さんはちょっとでも考えたことがあるでしょうか?

少なくとも、Hibは可能な限り早期に日本にも導入が必要。
肺炎球菌ワクチンは現在の株は開発からまだ年月が浅いので、
もう少し他国での結果を見てからでもよいですが、やって
悪い理由は全くなしと思います。
-------------------------------------------------

以上はNICUで働くK先生から頂いたメールを管理人が
ご本人の許可を得て抜粋整理して部分的に掲載したものです。

予防接種を受けさせるか否かで情報を集めている親御さん
に役に立ちそうな情報であるばかりでなく、自身の研究上も
ヘルスコミュニケーションの視点から重要な要素を孕んだ
トピックであることがわかります。

自分はこのK先生の言葉に非常に感銘を受けたと共に、
それでも「予防接種を受けさせない」親の心理に思いを
馳せました。同じ親としてわかるような気がしたのです。
一応管理人は小児科クリニックでナース
やってたことがあるんですが、K先生の言葉をメールで
読みながら親としての立場と、もとナースとしての立場が
裏腹になる瞬間もありました。
また、重症患児はほとんどクリニックには来ないわけで、
その点は医療機関による直面する問題のレベルの違いを
感じました。医療は奥が深い。。。

「親の心理」はこの問題の本質を成す部分なので、
最後のほうで整理を試みます。

明日は反対派(代表のホメオパシー)の主張ならびに
それに対する医師側の反論について見ていきます。

ね?長いでしょ?1回でやらなくて正解。。。
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【2006/01/31 14:12】 | お仕事・研究・学び | トラックバック(0) | コメント(0) |
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東京都世田谷区在住のじょに~です。長年慣れ親しんだ杉並区を離れ、先月隣の区に引っ越しました(ついでにハンドルネームも会社で頂いたコードネーム?に改名^^;)。興味があるのはヘルスケア領域のビジネス、ヘルスコミュニケーション(特にメディア経由)、シリアスゲームの医療健康分野における活用、医療ドラマ、医療者患者関係、医師支援、ワークライフバランス、翻訳、子育て、映画など。数年前南カリフォルニア大学(USC)でヘルスコミュニケーションについて学びました。帰国後は企業で医療分野のビジネスに取り組んでいます。通信制MBAでMBA取得。もともと看護師ですが博士号(医学)は社会医学領域で取得。シリアスゲームによるヘルスコミュニケーションにも興味を持っています。
引越し先にも慣れ、世田谷の畑の多さに驚きつつ、近所や公園を二人の息子達と散歩しつつ考えたことや日々学んだことなど書き続けていきたいと思います。

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