ヘルス・コミュニケーション日記
もとヒヨっ子研究者の会社員2年生が、ヘルスケア領域の話題や子育て日記、趣味等思いつきで綴ります。
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
【--/--/-- --:--】 | スポンサー広告 |
Cruzの講義紹介とHands-on Social Marketing, A Step-by-Step Guide
本日はCruzの講義のリーディング課題の1つだったこの本から
概要と感銘を受けた部分をご紹介。

アマゾンの「中み!検索」でちょっと読めます。

ソーシャル・マーケティングは先日紹介したメディア・
アドボカシー
と並んだヘルスコミュニケーション研究・活動
の2大ツールの一つだが、独学で本で学んだくらいで系統
だっては学習していなかった。ので、本日の予習+講義で
とても理解が深まった気がしている。引き続き研究上も
実践的な経験を積みたいところだ。

ちなみにリーディング課題は毎回複数の論文・複数の
テキスト合わせて合計約100ページがCruzの講義の平均値。
自分が今まで経験したUSCの大学院生向け講義では、
当たり前かちょっと多め、という読書要求量。

英語がまだ怪しい自分には大変だが、講義・演習と有機的に
連動して学習できるように非常に練られた上での課題なので、
頑張って読む気になる。早く英文を読むコツも少しは
つかめてきたが、まだまだ遅い。精進あるのみ。
もう少しCruzの講義について補足すると、
素晴らしいのは読んできた内容を使った実践的な演習が
講義に組み込まれていて、頭で理解したことを実体験で
なぞって補強するように設計されていること。本日は
先週のメディア・アドボカシーならびに本日のソーシャル・
マーケティングのノウハウを活かした演習。

学生一人一人が自分の設定したテーマ
(現行の政策を変えるためのキャンペーンを展開)
の専門家としてテレビのレポーターから取材を受ける、
という設定で実際にビデオカメラの前で全員が2分間の
インタビューに答えた(自分は準備不足で欠席の学生と
来週トライすることに)。これもただ話すだけでダメで

Keep Smile(常に笑顔でインタビューに協力的に)
Short bite(短い文言で、明確にメッセージを伝える)
Social Math(説得力のあるわかりやすい数字データを簡潔に紹介)
No Jargon(専門用語はわかりやすく言い換える)
DON'T Fight Media! Thank them!(インタビュアーとけんかしては
だめ、メディアに怒ってはだめ、「自分たちの目的達成を
強力に手伝ってくれる人たち」という認識の上で、感謝する)

などの細かいルールがある。いかにもアメリカ的で、日本の
メディア向けにこれがそのまま使えるかどうかは検討の
余地があるが、明快である。

他の学生はそれぞれクラスメイトの出来を上記ルールに従って
採点する、という仕組み。
来週ビデオを見ながらディスカッション予定。
こういった演習で実際の場面を擬似体験し、
皆でディスカッションし、フィードバックをもらい、
Cruzがまとめて理解とスキルを強化していく。

演習とは別にリーディング課題や演習を補完するための
講義もあるし(Cruzもノってくるとスパークしてオーラが出る
タイプだ)、リーディング課題は読みっぱなしではなく、
毎回割り振られた担当ごとに学生が司会(ファシリテーター)
をして学生内でディスカッションする。Cruzは基本的に
ファシリテーターまかせで、たまに助け舟を出したり
議論を盛り上げるために質問したりする。
で、試験とレポートで追体験して学習内容は長期記憶へ。。。
上記全てが採点対象になる。学習を強化し、スキルを身に
つけるための細かい配慮が何層にも設定されている。

先学期のValente, Mayer&Clarkeも同様だったが、この
「丁寧でかゆいところに手が届く」的な講義設計は
管理人個人は日本では得られなかったものだ。
こちらが積極的な参加を申し出て熱意・誠意を示せば、
授業料を払っていないvisiting scholarの自分でも
大抵のことは参加させてくれるし、大変ありがたい。
(特に授業料が高いことで有名なUSCなので尚更)
というわけで聴講ライフは非常に充実している。

前置きが長くなってしまった(いつも?)。
目次から上記「中み!検索」で目次の原文が読めるが、以下に
翻訳抜粋(例によって翻訳の妥当性・正確性は怪しいです。
翻訳といってもほとんどカタカナにしただけだけど。
引用は自己責任でどうぞ)

Section1 ソーシャル・マーケティングとは何か?
Section2 プランニング
Section3 メッセージとメディアの構築・開発
Section4 プレテスト
Section5 実行・実践
Section6 評価とフィードバック

本日主に読んだのは2のプランニングの部分。
ここはソーシャル・マーケティングの基礎を成す特に重要な
部分。この本は基本的にガイドブックなので英語が平易で
読みやすい上にヘルスコミュニケーター(この本では
Social Marketorという単語が使われていた)には
とても使いやすいように具体的な事例や情報源がちりばめ
られている。この本を読み通すと、実際の介入プログラムを
設計し、実践できるような気がしてくる。

このプランニングの章立てを見ると

5章 ソーシャル・マーケティングにおける
フォーマティブ・リサーチ(形成的調査)

問題が何で、どういう解決方法があって、
どんな資源・資金が活用できて、どんなメッセージで
誰に対してどんなメディア・方法を使って働きかけるか、
を練り上げるための準備調査(形成的調査という)のこと。
必要に応じて質的・量的調査を組み合わせ、らせん状に
問題とその解決に向けた戦略を明確化していく。

6章 分析
上記調査を分析する。分析のための具体的なワークシート。
注意事項などが紹介されている。

7章 対象者のセグメンテーション(区分け)
目的をより効果的に費用対効果の高い方法で実現するために
対象者を区分けし、絞り、第一の目標対象者
(primary target)と第二の目標対象者(secondary target)
を設定する。それぞれに対して形成的調査を行うことで
相補性・網羅性が高まる。

8章 方針・戦略の構築
全体の資金や人材その他資源(resource)をどう活用するか、
というガイドで実際の予算のレベルに合わせて
提示してある。予算がなければない也に実現する知恵も
色々と提示されていた(企業・行政・大学とのタイアップ・
参与観察でデータを集めるなど)と提示されていた。

定義:
マーケティングの生みの親、コトラーによる定義はこちら
(別の資料から抜粋 A Social Marketing Perspective on
Communication Campaign by Solomon)
the design, implementation, and control of program
seeking to increase the acceptability of a social idea
or practice in a target group(s). It utilize concepts
of market segmentation, consumer research,
idea configuration, communication, facilitation,
incentives, and exchange theory to maximize target
group response.(Kotler, 1975)
「対象とする人々に対して、ある社会的な考え方や情報・実践
を受け入れてもらいやすくするためのプログラムを設計し、
実行し、管理する方法論。その中には、市場の
セグメンテーション(区分け)、消費者調査、
広めたい情報の構成要素の検討、コミュニケーション、
ファシリテーション、誘引要素(対象者にとっての
メリット)、(社会的)交換理論などの考え方や方法論
が、目標とする対象者の反応を最大限に引き出すために
統合されている。」


お気づきのように日本語にしにくい単語(ファシリテーション
とか)がかなり並んでいるので、あまり美しい訳にならないのだが、
なんとなくソーシャル・マーケティングが
日本の公衆衛生・保健領域でそれほど認知されていない理由も
わかるような気がしてくる。日本語になじまない単語で
構成された概念・テクニック・・・・・関係ないかな。。

前述したメディア・アドボカシーも部分的に
内包されていそうである。

より単純にはこの本Hands-on Social Marketingにこう
表現されている(上記「なか見!検索」で読めますp.3)。
「ソーシャル・マーケティングとは
企業マーケティングのテクニックを、対象である
一般市民や社会全体に、それぞれの健康度や
快適な暮らしを促進する行動(生活)習慣を広める
ために活用することである」とのこと。

こっちの方がわかりやすい印象。
講義でも企業マーケティングとの違いについて言及される
ことが多く、一番の違いは最終的な目的が企業利益かまたは
対象者の健康行動や生活の質か、という違いにある。
(エイズ予防キャンペーンでコンドーム会社が儲かるとか、
がん予防のキャンペーンで病院や検査会社が儲かるとか、
そういったツッコミはあり:上記の境界は実は曖昧で
根拠となるのは「エビデンスの質」ということだろう。
Cruzによるとソーシャル・マーケティングに冠する
倫理的・利益相反的な論文はまだ少ないとのこと)

4つのP、8つのP:
普通、マーケティングというと4つのPが有名だが、
Product:
金銭と引き換えに消費者が手に入れる情報・商品・サービス等
Price:
上記のコスト
Place:
上記商品・情報・サービスなどを手に入れられる場所・方法
Promotion:
消費者と送り手をつなぐコミュニケーションの
方法・枠組み・戦略

ソーシャル・マーケティングではさらに4つのPを付加して
いくことが重要とされている。
Publics
情報・サービスなどを届かせ、支援する対象としての一般市民
という位置づけ(公共性の高い目標を扱う、ということか)
Partners
ソーシャル・マーケティング活動は一団体や組織、個人では
実現が難しい。問題解決のために有効なパートナーを見つけ
協同し、変化を実現する。(メディアもパートナー候補の1つ)
Policy
目的としている変化の実現のために必要であれば、
制度・法律・政策上のことや問題を取り巻く環境全体をも
変革することが重要
Purse Strings
目標達成のために必要な資金調達・寄付の確保と運用の重要性


う~ん・・・ここまで書いて気付きましたが、
非常に長くなってしまいそうなので詳細はまたの機会に
譲ります。自分が理解している要点は、実際のソーシャル・
マーケティング手法は、目次の5要素(Section2-6)から
成り立っていて、
予備調査・設計⇔プレテストの繰り返し・実践・評価・
フィードバック・修正
⇒次の介入プログラムへのヒント・改善案


という流れを踏むことです。そしてそれぞれの局面で
細かいテクニックや活用できる2次資料など情報資源があり、
この本にはそれが網羅されています。メディアの活用の
部分などは前述したようにメディア・アドボカシーと
重なる部分。

過日紹介したこの論文なども参考になるでしょう。

さて、疲れてきたので今回は最も印象に残ったことを
書いて終わりにします。
この本の中にAuditing Media Messagesというコラムが
あるのですが、そこには「現行のメディア・メッセージ
の監査をする」ことについて書いてあります。
要するにメディア分析なのですが、自分たちの取り組んでいる
領域に関する各種報道・テレビ番組・雑誌特集などを収集し
全体像を把握し、個々のメッセージの在り様を探ることを
意味しています。

自分が感銘を受けたのはこの目的の部分
「自分たちの問題解決のため、目標達成のためにメディアを
どう活用できるのか、という戦略を練るために、
メディアの
監査を行います」
そしてさらに「そのためには監査をもとにメディアを
批判するのではなく、どのメディアにどうアプローチすれば
有効にメディアを活用できるのか、という情報を吟味し
慎重に準備する際の重要な基礎資料とするのです」

とのこと。

なぜ感銘を受けたのか、というと以下のような背景が
あります。日本で自分が必死に収集したり見聞きした
「医療健康関連のメディアに関する」学術研究というのは、
特に医療専門家・医学研究としてはその「妥当性・正確性
を論じた批判研究」が主であり、しかもジャンルが限定されて
おり(テレビドラマの喫煙など)蓄積は少ない状況でした。

で、それらの研究は何のためになされているか、というと
少なくとも「メディアを活用する具体的な提言やアクションの
戦略を練るためには成されていない」、または論文は
そう読めない、ということです。
(注:臨床家にはいます。医師側からのメディア教育を
実践している臨床家の先生を知っていますし、日ごろお世話に
なっている(株)シナジー社でも
医療専門家とメディアをつなぐ勉強会が主催されています)

つまり日本の医学・保健・看護・健康などの領域の
学術研究者に「メディアを活用する」という姿勢・視点・
ノウハウがほとんど無い、ことを意味していると考えます。
(取り組みが論文になっていない、自分が知らないだけ、
という可能性は大いにありますが:ご存知の方、是非ご教示ください)

こういう背景があったので、当たり前に教科書レベルに
実践的で具体的なテクニックや理念が浸透していることに
感銘を受けたのでした。日本では全く逆のこと(ここで
「やってはいけない」とされていること)をやっています。

日本では不要な姿勢なのでしょうか?
少なくとも自分はそうは思いません。
なぜ歴史的にこれほどの違いが生じたのかは、
日米の文化的・学術領域の構造的な違いからの
考察が必要だと考えています。

ラフなアイデアとして、

・格差が少ない
(情報・経済・生活レベルなどの格差が激しいと
米国のようにその格差を埋めようとい取り組みが
自然発生しますが、日本ではその必要性が低いのかも:
でも医療健康領域は情報格差があるので例外と思いますが)

・お上(かみ)にたてつかない国民性
(社会は自分たちの手で変えられると思っているか否か。
お上を信頼している国民性とも言い換えることが出来るか)、
日本人にとってメディアは「お上」の一つなんじゃない
だろうか?と思えてきます。

・学際領域が育ちにくい
縦割りの官僚制を引き継いだ大学組織のあり方。
明治時代からあまり変わっていない制度の弊害。
米国と違って人材交流が希薄。
日本ではほとんどの場合、官僚は一生官僚、研究者は一生
研究者。企業人も一生企業人。行政職は一生行政職。
これでは他分野との協調が必要なプロジェクトの円滑な
運営を妨げる要素が解決しにくい。
米国は企業・行政・政府・大学・シンクタンク・NPO・
財団・市民団体など様々な組織間を人材が行き来することが
日本よりはるかに豊富だと認識しています。
良し悪しはありますが、制度の変化はこの方が早そうだし
何より「異分野にも強い専門家」が育ちやすい、学際を享受
しやすい風土を産むと思います。専門馬鹿を嫌う米国の
大学教育や医師教育の在り方にも影響を受けているとは
思うけど(多様な経歴を持つことがアピールになる)。

・権威構造の対立
学術とメディア(第4の権力)という権威構造が
バッティングしてしまう。特に医学という権威構造は顕著。
けんか相手にこそなれ、協同・協調・パートナー、という
関係になりにくい。
医療における権威構造についてはこちら必読。



以上、全くの思い込みで議論の余地は多々あると思いますが
半ば妄想気味に日ごろ考えています。

この日米差は、メディア・アドボカシーを学んだ際にも
感じたことでしたが、今回より強く明確に感じました。
ソーシャル・マーケティングがプログラム開発に
あたっては全体像をすっきり見通せる方法論だからかも
しれません。「全体像の中のメディア活用」という位置づけの
明確さ故でしょうか。

今後もより理解と経験を深めて日本の興味を持ってくださる
方々と情報をシェアしたいと思います。ふう。なんか疲れた。
スポンサーサイト
【2006/01/27 21:49】 | 参考書籍 | トラックバック(0) | コメント(0) |
<<批判から活用へのパラダイムシフト | ホーム | ヤツの近況:3ヶ月健診と予防接種>>
コメント
コメントの投稿












管理者にだけ表示を許可する

トラックバック
トラックバックURL
http://healthcomm.blog32.fc2.com/tb.php/113-350952db
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
ブログ内検索

最近の記事

カテゴリー

プロフィール

じょに~

Author:じょに~
**お探しの情報は上のサイト内検索かカテゴリから探索願います** 古い記事は下の方の月別のリンクからどうぞ。
----------------------
東京都世田谷区在住のじょに~です。長年慣れ親しんだ杉並区を離れ、先月隣の区に引っ越しました(ついでにハンドルネームも会社で頂いたコードネーム?に改名^^;)。興味があるのはヘルスケア領域のビジネス、ヘルスコミュニケーション(特にメディア経由)、シリアスゲームの医療健康分野における活用、医療ドラマ、医療者患者関係、医師支援、ワークライフバランス、翻訳、子育て、映画など。数年前南カリフォルニア大学(USC)でヘルスコミュニケーションについて学びました。帰国後は企業で医療分野のビジネスに取り組んでいます。通信制MBAでMBA取得。もともと看護師ですが博士号(医学)は社会医学領域で取得。シリアスゲームによるヘルスコミュニケーションにも興味を持っています。
引越し先にも慣れ、世田谷の畑の多さに驚きつつ、近所や公園を二人の息子達と散歩しつつ考えたことや日々学んだことなど書き続けていきたいと思います。

プロフィール詳細はこちら参照ください。

*運営ポリシーについて
当ブログはリンクフリーです。
トラックバック機能はエントリによっては使用しません。あしからずご了承ください。ご意見・ご批判・ご質問歓迎しますが、建設的・学術的な批判以外の個人の誹謗中傷・管理人に関わりの無い宣伝広告目的のもの・意味不明なコメントやTBは削除する場合があります。

*コメント・TBについて
スパムがひどいので日本語限定&承認制にしてあります(最近スパムコメントが急増してサーバー制限をしているのでうまくコメントできない場合があります。その場合は以下にメールください)。
takabeppu[at]gmail[dot]com
[at]をアットマークに[dot]を.に代えて送信願います。

*アフィリエイトについて
書籍・音楽CD等の紹介の際、amazonその他のアフィリエイトを使用しています(Google Adsense検討中)。

カレンダー

08 | 2017/09 | 10
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

月別アーカイブ

リンク

おすすめサイト はないろ よしきくん

このブログをリンクに追加する

RSSフィード

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。