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ヘルス・コミュニケーション日記
もとヒヨっ子研究者の会社員2年生が、ヘルスケア領域の話題や子育て日記、趣味等思いつきで綴ります。
News for a Change: An Advocate's Guide to Working With the Media
本日は、Cruzの講義で最初のReading課題だった
Media Aavocacyのバイブルであるこの本の概要をご紹介。
(ドラマERのあらすじ紹介は再放送だったので割愛)


博士論文研究の時に見つけて以前から持っていたのだが、
講義の補足をもらいながら精読する機会をもらい、
非常に理解が深まった。
メディアと一般市民・行政・医療専門家・研究者などの
関係を考える上で「目から鱗」、という感じ。
実践的な知恵を授けてくれる良書である。

ヘルスコミュニケーションに興味のある学生・研究者・行政・
医療関係者だけでなく、メディアに興味のある人・
患者団体のような市民活動や社会的なPR活動をしている方も、
ジャンルに関わらず読んで損はない本だと思う。
ガイドブックのような平易な言葉遣い、豊富な事例(実体験)、
実践的なHow toなどで構成されている。

過日紹介した
翻訳したいヘルスコミュニケーション書籍リスト

加えるべし。
著者のWallackらによる定義を、よりコンパクトに
まとまっている他の書籍から引用すると、

Media Advocacyとは、医療健康福祉に関連した公共政策を
改善するために、自治体や団体レベルの活動と連動した
マスメディアの戦略的な活用のことである。


第一の目標はニュースメディアを動かすことであり、
第二の目標は自費の広告媒体を活用することである。

メディア・アドボカシーは、
社会のあり様を改善するために必要な「声」の量と質を
向上させることを目指している。公衆衛生の観点から社会的に
正しいと信じられる価値を社会に向けて共鳴させるために、
その「声」をどのように設計するかを注意深く検討すること
でもある。
(以上、Public Communication Campaigns 3rd 31章p.393から
抜粋引用:前述したリストにある別の書籍)

なんとなく概要はこんな感じ。
で、このNews for a Changeは、上記Media Advocacyをより
効率よく実践的に行うために「10の知恵」を紹介している。
(例によって翻訳の妥当性・正確性は保証しませんので、
引用は自己責任でお願いします)

1.全体戦略あってのメディア戦略
2.メディアにきちんとして欲しかったら、自分がまずきちんとする
3.ジャーナリストの行動原理を理解し、彼らのメリットを生み出せ
4.問題(抽象)ではなく、ストーリーを提供せよ
5.解決方法も含めて、メディアがよいストーリーを作れるような
素材を提供せよ
6.自分のメッセージの価値を高めよ
7.インタビュー(取材)はおしゃべりとは違う重要なチャンス
目的意識を明確にし無駄を省け
8.政策決定者や関連分野のオピニオンリーダーにメッセージを届かせよ
9.全てのメディア・手段を活用せよ
10.常に自身の戦略と結果を評価し、次回に向けた改善を行え



以下、簡単に補足

1.全体戦略あってのメディア戦略
⇒企業経営上は当たり前のことなのだが、医療専門家・
公衆衛生専門家・行政などの担当者はこういったトレーニング
をきちんと受けずに現場に入ることが多い。学ぶ機会も少ない
かもしれない。そういう意味ではまず知らなければいけない
基本だろう。問題は何で、その問題を解決する方法は何で、
その解決方法を実現するための全体の戦略はどういうものか。
その上で初めてMedia Advocacyの具体が決まってくるので
あって、「メディアありき」ではない、ということ。
メディアの価値や利用可能性は積極的に見ていくが、
妄信はしない、という冷静な姿勢が伝わってくる。

2.メディアにきちんとして欲しかったら、自分がまずきちんとする
⇒これも当たり前のこと。だが個人的な感覚ではなかなか
難しいこと。専門家はメディア報道の誤解や悪意に
「怒っている」ことが多く、その怒りから開放されずに
建設的な取り組みにならないことが多々あり。
メディア側から言っても、当たり前のこと。
社会人としての基本は守るべし。
その記者の記事に目を通し、その人の仕事を理解した上で
連絡を取り、自分のメッセージを記事にしてもらえないか
打診してみる。最初に出す手紙の文面などが具体的に
紹介されている。

3.ジャーナリストの行動原理を理解し、彼らのメリットを生み出せ
⇒このブログでも繰り返し紹介しているWin-Winな関係を構築
するための第一歩。異なる目的と行動原理を持つ人たちと
一緒に何かの問題解決を図る場合は、これが徹底できるか
できないかで進捗は大きく異なってくる。
これもジャーナリスト側の視点で考えるためのノウハウが
紹介されている。

4.問題(抽象)ではなく、ストーリーを提供せよ
⇒「目から鱗」という感じ。Evidence-Basedな議論に
慣れた(縛られた)医療専門家・研究者はここを勘違いしやすい。
正確なデータや理論は勿論必須だが、それだけでは
メディアは動かない。
彼らは読者・視聴者が気に入る「お話」を待っているのだ。
問題点・解決方法が明確になるような、「お話」。
それはその問題に関連した人間(当事者や専門家その他)個人
が、その問題に直面して何を感じ、どう考え、どう行動したか、
という一種の「ドラマ性」が重要なのだろう。
具体的な体験談である場合もあるだろう。

これを生み出すまたは探し出すのは、口で言うほど
簡単なことではないが、その構築のノウハウが具体的に
この本には紹介されている。
*evidence-basedな論理と矛盾しないことは可能か?という質問に
Cruzは「ケースバイケース」との答え。
ストーリー構築の仕方が、専門家側の手腕を問われるところ。

5.解決方法も含めて、メディアがよいストーリーを作れるような
素材を提供せよ
⇒自分でストーリーを提供できなくても、メディア側が
それを作れるような良質の素材を提供することはできる。
これに力を注げ、というもの。
*「不正確で妥当でない表現にされてしまったら?」
という管理人の質問にCruzは「それは常に起こる。しかし
そこで怒ってはいけない。1番やってはいけないのは、
怒ること。その記事の担当者や責任者に直接連絡を取り、
自分の主張を伝え、次回にこういったことが起きないように
するためにはどうすればいいか、相手自身の意見や仲間内
でも話し合う。1回ごとに知恵を蓄積していくしかない。
次によりうまくやるために。」
とのこと。知恵が蓄積してくれば、おのずと信頼できる
記者・編集者・媒体が見えてくるだろう。

6.自分のメッセージの価値を高めよ
⇒専門家や当事者自身が、「メディアに対する伝え方」が
下手な場合がある。何が問題で、どういう解決方法があるのか。
そのメディアはどう貢献しうるのかを勘案して最も
効果的な情報量・伝え方・対象を選択していくことが
重要である。大学・病院のメディア対応なども改善の余地は多々ある。
一昨年行われた
日本メディカルライター教会JMCAのシンポジウム

ゲストVastag氏も同じことを言っていた。
JMCAのウェブサイトはこちら

7.インタビュー(取材)はおしゃべりとは違う重要なチャンス
目的意識を明確にし無駄を省け
⇒Advocatorは、インタビュー(取材)を受けるプロに
ならなければならない。インタビューに望む前には
周到な準備とその場での緊張感が最も大事だ。
沈黙に耐えることも重要。
そこにはインタビュアーとの駆け引きがある。

8.政策決定者や関連分野のオピニオンリーダーにメッセージを届かせよ
⇒メディアは(有権者である)一般市民に直接届くだけでなく、
有権者を動かす人にもメッセージを届かせることが出来る。
それは10代の子供のように一般に弱い存在だと思われている
こともあるし、逆に影響力の強い人物だったりする。

メディア⇒子供⇒大人
メディア⇒オピニオンリーダー⇒一般市民

といった影響力の伝播の構造。
そういった第一の対象(ここでは特にオピニオンリーダー)に
いかに届かせるか、という戦略が重要。
具体的には、新聞のコラム欄・投書欄の書き方・
活用の仕方などが紹介されている。
(余談だが「子供⇒大人」パターンは禁煙教育などで
すでに活用されているモデルである)

9.全てのメディア・手段を活用せよ
⇒これもこのブログで何度も紹介したヘルスコミュニケーション
研究者・実践家たちの行動原理の一つ。
使えるものは何でも使う、という徹底した姿勢。
ありとあらゆるもの。インターネットやゲームなどの
最新のものは勿論、本のしおりやレシート、ステッカー、
チラシ、カード、バス広告、最近日本で流行っているという
腕につけるリング、ありとあらゆるものがメッセージを
伝える「メディア」に成りうる。どこまでその可能性を
追求し、予算との兼ね合いで知恵をめぐらせたか、
(時には独自のビジネスモデルを構築する必要もあるだろう)
ということが重要なのだと思う。

10.常に自身の戦略と結果を評価し、次回に向けた改善を行え
⇒日本のこういったジャンルの活動に欠けていると思うこと。
評価のノウハウは政策におけるプログラム評価の(今や)古典
であるPattonらの「活用志向型プログラム評価」に関する方法論
が紹介されていたが、これはValenteのProgram Evaluation
の講義
で紹介されているノウハウの方が先を行っている感
があった。

以上。


というわけで、この本も是非翻訳して日本に紹介したい。
(本文130ページ程度と作業量・コストの敷居も低いし)
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【2006/01/21 20:05】 | 参考書籍 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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東京都世田谷区在住のじょに~です。長年慣れ親しんだ杉並区を離れ、先月隣の区に引っ越しました(ついでにハンドルネームも会社で頂いたコードネーム?に改名^^;)。興味があるのはヘルスケア領域のビジネス、ヘルスコミュニケーション(特にメディア経由)、シリアスゲームの医療健康分野における活用、医療ドラマ、医療者患者関係、医師支援、ワークライフバランス、翻訳、子育て、映画など。数年前南カリフォルニア大学(USC)でヘルスコミュニケーションについて学びました。帰国後は企業で医療分野のビジネスに取り組んでいます。通信制MBAでMBA取得。もともと看護師ですが博士号(医学)は社会医学領域で取得。シリアスゲームによるヘルスコミュニケーションにも興味を持っています。
引越し先にも慣れ、世田谷の畑の多さに驚きつつ、近所や公園を二人の息子達と散歩しつつ考えたことや日々学んだことなど書き続けていきたいと思います。

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